僕が初代NSXタイプRに魂を揺さぶられる理由

1998年に無限×童夢プロジェクトから全日本GT選手権に参戦して以来、12年間にわたってGT500クラスをホンダ・NSXで戦い続けた道上 龍さん。2000年には同選手権のシリーズチャンピオンを獲得していることもあって、“道上といえばNSX”というイメージをもっているレースファンは決して少なくないと思うが、道上さんはレースだけに限らず、プライベートでも初代NSXタイプRを所有する生粋のNSXフリークでもある。公私にわたって、NSXとともにカーライフを送ってきた道上さんの魂を揺さぶるものとは?

日本を代表するスポーツカーは
NSXをおいて他になし

「初代NSXタイプRが発売されたのは、僕がちょうどレースを始めた頃でした。ホンダのフラッグシップとしてNSXがあるのは当然知っていましたし、ニュルブルクリンクでスゴいタイムを出した雑誌記事も目にしていたので“いつかは乗りたい!”と。でも、当時の僕にとってNSXを買うのは夢のまた夢。でも、それから数年が経った1998年にNSXをドライブする機会を得たんです。といっても、市販モデルではなく、GT500のレーシングカーでしたけどね(笑)。その時に感じたのはミッドシップの特性であるリアのトラクションのよさでしたが、いっぽうで前後タイヤの温まり方が均等ではないことにも気付かされました。先にリアが温まり、後からフロントが温まる。“これは簡単に乗りこなせないな”と感じたことを今でも覚えています。その後、少し経ってから市販モデルをドライブしたのですが、動きだけでなく、独特のホンダV6サウンドもすごく似ていたのが印象的でした。

 レーサーとして駆け出しだった頃、“いつかは乗りたい!”と思っていた市販モデルのNSXを手に入れて、現在も乗っています。街乗りとサーキットを両立したいんですけど、サーキットを走るといろいろなところに負担がかかるので、その対策のためにいろいろなパーツを試してみたり……。VTECはエンジンを高回転まで回した時のハイカムに切り替わってからのパワーが楽しいから、どうしてもサーキット走行で楽しんじゃうんです。でも、街乗りも視野に入れているので、ナビやETCも付いているんですよ(笑)。

 僕は最新のNSXもドライブしたことがありますが、新旧NSXはまったくの別物。最新のNSXはハイブリッドで4WDだし、パワーも500馬力オーバーで初代NSXタイプRとはスペックがあきらかに違います。これはこれで最新のNSXのよさだと思いますが、500馬力を超えるようなクルマはプロのレーシングドライバーでも制御がないとドライブが難しいんですよね。でも、初代NSXタイプRは軽量でかつパワーも280馬力とドライブしやすい領域にあります。そんなこともあって、クルマを操るおもしろさは初代NSXタイプRのほうがありますね。加えて、初代NSXタイプRは日本を代表するスポーツカーというイメージが僕のなかにはずっとありますし、本当に20年以上前に発売されたクルマなの? っていうくらい、今見ても古さをまったく感じませんから」

 以上のコメントから、道上さんの初代NSXタイプRに対する“特別な想い”と“根っからのクルマ好き”という側面を垣間見ることができるだろう。そして、道上さんのクルマ好きは実車だけにとどまらず、R/Cカーやミニカーまで広範囲にわたり、自宅にはミニカーがズラリと飾られているという。そこでーー最後にNSXを知り尽くす道上さんにSamuraiシリーズから発売されている初代NSXタイプRについて、その率直な感想を訊ねてみた。

「メッチャ出来がいいですね。エンジン部分はしっかり再現されているし、リアウィンドウの熱線もリアル! っていうか、熱線の本数も実車と同じじゃないですか(笑)。トラクションがかかった時にリアがグッと沈むので、リアの車高は実車のほうがもうちょっと高いかな? という気もしますが、それを差し引いてもよくできていますよね。

 僕は実車だけでなく、R/Cカーもやりますし、家にはミニカーも飾っています。その大半は僕とともにレースを戦ったクルマですが、それらを眺めていると当時の記憶が蘇ってくるんです。“この時はこうだったな”とか、“あそこでミッションが壊れなければチャンピオンを獲れていたのになぁ”とか(笑)。自分が乗っていたクルマを忘れないようにするため、さらに言えば飾ってあるミニカーが自分自身の歴史そのものですから……自分が乗ってきたクルマのミニカーは絶対に手に入れたいですし、これからも集め続けたいですね」

レーシングドライバー

道上 龍

1986年にカートナショナルASクラスのチャンピオンを13歳で獲得。1994年に全日本選手権F3選手権で新人王、2000年に全日本GT選手権・GT500クラスでシリーズチャンピオンを獲得。他にもスーパーGT、フォーミュラ・ニッポン、ル・マン24時間レースなどで活躍。ドライバーとして一時は第一線を退いていたが、2017年に日本人初のレギュラードライバーとして参戦したFIA世界ツーリングカー選手権(WTCC)で復帰。2018年もModulo Drago CORSEのチーム代表兼ドライバーとして、スーパーGT・GT300クラスにNSX GT3で参戦。


取材協力:アイブローズ http://www.miyaji-company.com/70706/

道上さんから絶大な信頼を得る『アイブローズ』は、神奈川県鎌倉市で車検・修理・点検などの一般整備から愛車のチューンアップやドレスアップまで、プロのたしかな技術で応えてくれるショップ。代表の宮地さん(右)は温厚な方で誰からも親しまれる存在だ。