手元に歴史を残せるミニチュアカー 私にとって実車に最も近い存在です

大阪のブレーキパーツメーカー「ディクセル」の営業部 企画広報課として、雑誌媒体の対応から、イベントへの出展、企画などディクセルの顔として全国各地を飛び回る金谷大輔さん。

ONはブレーキのスペシャリストとして多忙な日を過ごしているが、OFFはミニチュアカー、それもF1(フォーミュラ1)に特化したコレクターの顔を持つ。なぜ、金谷さんはF1のミニチュアカー収集にハマったのか? 仕上がったばかりのホビールームにお邪魔して話を伺った。


約30年間集めたF1モデルコレクションを大型ディスプレイケースにコーディネイト


「好きなモノに囲まれて過ごせる趣味の部屋を持つことは昔から夢でした。そこに、約30年集めてきたF1のミニチュアカーをディスプレイし、眺めて過ごす。理想としていた部屋を自宅購入とともに叶えることができました」


 自分の色に仕上げられる、マニアならうらやむスペースを手に入れた金谷さん。2つの大型コレクションケースにディスプレイされたF1のミニチュアカーの数は約250台オーバー。コンストラクター&ドライバーごと、日本人ドライバーコーナーなど金谷さんの考えたキーワードやテーマに分けられ、しかも年式ごとに整然と並べられている。


「これまでは専門店で見るようなパッケージに入れたまま縦積みで収納。はみ出したものは机の上に、押し入れにと分散して保管していました。今回、カテゴリー、年式ごとにこだわって並べることにしましたが、どれがどの年式かパッと見ただけでは判断できず、裏を見ながら復習しました。シャッフルされたらもう分からないですね。ただ、今回の整理で、毎年変化していくF1マシンのエアロダイナミクスのデザインが面白くてハマっていったことを思い出しました」


F1マシンの革新的な空力パーツに興味その進化を知るために毎年買いたくなる


 金谷さんがF1に興味を持った1990年代中盤から2000年代後半まではレギュレーションの改定に合わせて、革新的な空力パーツが開発&採用され、目まぐるしく形状が変化していた時代。ティレルのドルフィンノーズやXウィング、BMWザウバーのツインタワーウィング、フェラーリのリムシールドなど数多くのデバイスは性能だけでなく、ルックスでも魅了した。金谷さんにとってミニチュアカーは興味を持ったF1のエアロダイナミクスをじっくり観察するためのアイテムで、「このマシンはこうだったけれど、ライバルチームのマシンはどのようなディテールとなっているのだろうか」という更なる興味から、次のミニチュアカーを手に入れる。その繰り返しで、どんどん増えていったそうだ。コレクションケースは今ではエアロダイナミクスの変遷を振り返る資料集になっている。

「最初に興味を持ったのはマクラーレン・ホンダのMP4/6。音速の貴公子"アイルトン・セナ"を軸に集め始め、ライバルのプロスト、マンセル、そしてシューマッハのマシンという感じで…。セナ没後はシューマッハが中心となり、ベッテル、アロンソという風に買いそろえていきました。1台買ってしまうと、次の年、またその次の年もと知りたくなるんですよ。興味が止めどなくわいてくるので、多いときは1シーズンで6~7台は購入していました。メーカーはほぼミニチャンプス。他では手に入らないモデルもあり、個人的にはF1ミニチュアカー=ミニチャンプスというイメージです」

マシンのカラーリングにも歴史あり収集することでいろいろ見えてくる


 ディテール以外にひかれたのはカラーリング。ラッキーストライクやベネトン、2000年代中盤のクロームカラーのマクラーレンなど特殊なものは即手に入れている。


「約30年前から見返すとタバコメーカーから携帯電話会社などスポンサーも大きく様変わりし、カラーリングからも時代の変遷を感じることができます。1990年のベネトンのカラーリングなどは、今見ると飛びぬけたデザインですよね。そうした部分も面白いです」


 F1に夢中になっていたときには結果がすでに分かっていても、あえて情報をシャットアウトして、放送を楽しみに見ていたという金谷さんだが、最近はレースの映像よりもミニチュアカーを見ている方が楽しいという。


「TVで走っている姿を見るのもサウンドを聴くのも好きなのですが、ミニチュアカーはTVよりも実車に近いというか、本物に対してイメージがわきやすい。TVよりもより細部まで見ることができますし、実際に取材をして製作されていますから、カラーも本物に近いと思っています。私にとって映像よりも手前にある存在だと感じています」


 F1のミニチュアカーに熱を上げてきた金谷さんだが、最近はコレクションに小食気味だ。

「現在は日本人ドライバーもいませんし、下位が上位を食うようなジャイアントキリング(番狂わせ)もほとんどありません。マシンメイクも各チーム変化が少なく、興味が薄れたというのが正直なところです。それにともなってミニチュアカーの収集も控えるようになりました」


買い逃したモデルを見つけることは思い出も含めて再会するようなもの


 最近はミニカー専門店に出掛けても、最新モデルではなく、セールコーナーに目が行くという。それは決して安いものを買うためではなく、昔買いそびれたものを手に入れるためだ。

「ミニチュアカーの購入は一期一会。特に人気のモデルは発売直後に購入しないと手に入れるのが難しいものです。そんな当時買い逃したモデルを見つけることは思い出を含めて再会するようなもので、お宝を発見したような感覚は今もワクワクします。それがお手頃価格なのですから、ついつい手に取ってしまいます(笑)」


長年体に染みついたミニカーコレクター体質からは、なかなか抜け出せそうにないようだ。


「ミニチュアカーの面白さは自分の手元に歴史を残せること。1/1の本物は所有することは不可能ですが、ミニチュアカーならすべてそろえられます。また、どれも思い入れがあって購入していますので、手に取れば当時の出来事が脳裏に浮かびますね」

 帰宅してホビールームの扉を開けると、同時にセンサーが感知してLEDライトがコレクションケースを照らす。そんなちょっとした演出が心を満たし、休日は眺めて感慨にふけながら酒を飲む。金谷さんにとってミニチュアカーは大切なアルバムのような存在である。

株式会社 ディクセル 営業部 企画広報課 金谷 大輔さん