人生最後のクルマは小さくて個性的なスポーツカーで締めくくろう、と決めていたのがそもそものきっかけ。ロータス・エランとトヨタ・スポーツ800(通称:ヨタハチ)は、そういう意味でずっとアンテナを張っていて、30代の頃から20年に渡って探していました。月日が流れ良い個体と出会って結局ヨタハチに。
でも一番の理由は、この個性的なスタイリングと、それには似つかわしくないエンジンの組み合わせ。800cc、空冷の水平対向2気筒エンジンなんて、コンプレッサーかバイク用ですよね。元々はパブリカという実用車のために作られたエンジンは、タフで燃費も抜群。500kg台の軽量ボディとあいまってリッターあたり20km以上走っちゃう。
最近のエコカーと比べても、まったくひけをとらないエコカーぶりが痛快というか。軽いから、走っても曲がっても、これぞスポーツカーという振る舞いもヨタハチならでは。空力を優先した流線型のデザインは、戦時に活躍した飛行機技師、長谷川龍雄氏によるものだと知ったのはヨタハチを購入した後でしたが、飛行機好きとしてはそんな生い立ちもヨタハチの魅力です。小さいながらも美しい流線型のボディデザイン。しかし、エンジンを始動するとバタバタと呑気な音を立てる。でも走り出すとキビキビとよく走る。意外な組み合わせが生んだ奇跡のスポーツカー、それがヨタハチというクルマの最大の魅力ですね。
●楽しみ方(乗る、イジる、集まる)
そんなこんなで10年ほど前に個人売買で手に入れたのが66年式の前期型、銀色のヨタハチ。前のオーナーさんの手入れが行き届いた個体で、程度は申し分なく、50年以上前のクルマとは思えない軽快な走りで大満足です。
実はもう一台、ボクと同い年の68年式、後期型があります。こっちは部品取り用として手に入れたのですが、年式を知ってしまったらドナーにはできなくなっちゃって。いつかはこちらをサーキット仕様にレストアしようと考えています。車体も軽く、構造もシンプルなクルマだから、バイクをイジる感覚で触れるのも長く付き合える(楽しめる)要素。古いクルマなので、さすがに部品調達には苦労しますが、旧いクルマのイベントやスワップミート、オークションなどで同じヨタハチオーナーさんと知り合って、部品やミニカー等をちょこちょこ買い貯めてるのもまた楽しい時間です。
●サムライミニカーについて
「日本の名車ベスト○○台」なんていう雑誌のランキングがあれば決まって常連ともいえるヨタハチですが、意外とモデル化されることが少ないのはオーナーとしては寂しいかぎり。特にミニカーは1/43スケール以下のモノばかり。
ヨタハチの定番モデルである1/20スケールのプラモデルより大きな完成品をガレージにドーンと飾りたいと以前から思っていたので、京商さんのサムライシリーズからヨタハチが出る!と聞いた時は期待値レッドゾーンですよ(笑)。
実際、現物は期待以上の出来。特に真横からの眺めは抜群のプロポーションで、つくづくミニカーはこれくらいのボリュームがないって思いました。
今回のカラーリングは赤でしたが、次回はぜひ銀をよろしくお願いいたします!
桜井靖人(さくらいやすひと)
Yasuhito Sakurai
雑誌「モノ・マガジン」副編集長。
おもにクルマ、バイク、アウトドアとDIY、ミリタリーページを担当。クルマ好きの父親の影響で、小学生の頃からランドセルを背負って近所の自動車ディーラーでカタログ収集を始め、自動車を趣味とする活動を開始。18歳の免許取得からこれまで50台のクルマを乗り継ぐ52歳。
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